勝者のメンタリティ
サッカーのみならず、勝負の世界では「勝者のメンタリティ」という言葉をしばしば耳にする。
今日はレアル・マドリードがマンチェスター・シティに勝利を収めた。
後半45分からの逆転劇で、見事にCL決勝の切符を掴んだのである。
国内三冠を達成しながらも、CL優勝のないマンチェスター・シティ。
対して三連覇という偉業を含む、歴代最多のビッグイヤーを誇るレアル・マドリード。
どちらも国内では現在首位。
イングランドとスペインのトップチームであることに疑いはない。
マンチェスター・シティが2点をひっくり返され逆転負けなど、英国では起きない。
しかしそんな「あるはずのない」ことが起こってしまった。
試合後にはレアル・マドリードの勝利の要因について、「勝者のメンタリティ」という言葉が散見された。
ということで今回は、勝者のメンタリティについて独断と偏見で話していこうと思う。
勝者のメンタリティとは
「勝者のメンタリティ」は有り体に言えば「勝って当然という感覚」となる。
タイトルをとって当たり前、2点ビハインドだが逆転できて当たり前などだ。
もっとわかりやすく言うと、勝負強い。
勝たなければいけないところでは必ず勝つ、という心構えである。
勝者のメンタリティの効果
勝者のメンタリティが及ぼす効果は、主に3つではないか。
効果① ストーリーを思い描かせる
自分の行動が、自分の想像を超えることはない。
想像にないということは、選択肢にないということだからだ。
勝者のメンタリティの保持者は、常に勝利の選択肢が存在し続ける。
あとはそこにどう辿り着くかの問題である。
勝利への道筋、ストーリーが常に存在し続ける。
仮にどれだけの茨道であっても、「道はある」と知っていることで、思い切りのよい行動ができる。
当然心が折れることもない。
逆境による精神的ダメージがないのである。
効果② 雰囲気の変換力が高い
常に保持している勝利へのストーリーだが、外れそうになることもある。
ビハインドや逆境などだ。
そんなときは再び勝利へのストーリーにベクトルを修正しなければならない。
勝者のメンタリティを持つ個人や組織は、この修正力が凄まじいと感じる。
凄まじさは2つある。
1つはどれだけ些細なことでも、「あれ、なんか流れが来てるんじゃね?」と思わせる力だ。
ベクトルには「向き」と「大きさ」があるが、これは向きの話だ。
極小の出来事で向きが特大の転換となることを指す。
高い位置でマイボールになったというだけでスタジアムが大きく沸く、などはその筆頭だ。
もう1つは大きさの観点。
起きたイベントを、現実問題より遥かに大きく見せる・感じさせる事ができる。
サッカーで流れを変える行為と言えば、選手交代だろう。
仮に交代した選手が好プレーや得点を奪うと、采配的中やヒーロー誕生を予感させ、単なるチームでも流れを引き寄せる。
勝者のメンタリティを持つチームにこれがハマると厄介だ。
一気に流れを持っていかれる。
イベントに関しては言うまでもなく、ゴールになる。
例えばマンチェスター・シティは後半45分にロドリゴに1点奪われたが、この時点では1点リードだ。
89分は0点で凌いでいたのだから、あと5分繰り返せば良い。
PSGも同じだ。
ドンナルンマがミスをしたところで、そのまま時間を進めれば勝てた。
ところがどちらもそうはできなかった。
勝者のメンタリティを持つチームと相対するときに怖いのは、何故か勝っているはずなのに「逆転されるのではないか」と思わせることだ。
この時「追いつかれるのではないか」という思考がすっ飛ばされる。
普通のチームと対戦していてこうはならない。
もちろんCLはトーナメントだから勝負がつくのは当然なのだが、「負けているはずなのに次のステップが同点でなく逆転になる」のが勝者のメンタリティを持つチームの特徴だ。
1点返そうの雰囲気でいざ1点取ると、同点の雰囲気を超え、逆転の雰囲気になる。
これが雰囲気の変換力が高いということである。
効果③ 優勢な五分を生む
さて、茨道であったが成功のストーリーを常に持ち続け、流れを一変させることにも成功した。
試合を五分に持っていくことに成功する。
しかし実際にスコアは五分だが、何故かそんな気がしない。
雰囲気は完全に掌握され、凡百のチームではこのまま飲まれ、一気に畳み掛けられる。
仮にPK戦のような運ゲーになったとしても、「勝てた試合がいつの間にか五分になっている」方は苦しさを感じる
五分は五分でも、双方の捉え方は天地の差だ。
逆境から「持ちこんだ」五分と、圧倒的優勢から「持ってこられた」五分。
冷静に考えれば、0-0で開始した状態と何も変わっていないのに、どちらもそうは捉えない。
戦っている時間は同じであり、疲労度も変わらないはずだ。
現実はイーブンだが、しかしその内面には、大きな差がある。
後ろ向きなチームは不要な力みやミスを生む。
結果はもう目に見えている。
勝者のメンタリティを得る方法
問題となってくるのは、勝者のメンタリティをどのように獲得するかだ。
勝利を重ねればいいというわけではない。
フランスで勝ち星を重ねるPSGや、イングランドで首位を走るマンチェスター・シティはまさに常勝チームだ。
しかし残念ながら、彼らの勝利は「勝者のメンタリティ」の前では意味をなさなかったのだ。
CLで優勝するためにはCLで優勝するしかない、などという矛盾が生まれてしまうのだ。
既に根付いているチームなら良いだろう。
しかしまだ根付いていないチームは今後ずっと敗者のままなのか。
そこで「初めて勝者のメンタリティを得る方法」について考えたい。
勝者のメンタリティの発生条件
勝者のメンタリティがないチームはいかにしてそれを得るのか。
出来る限り、どのチームでも出来る再現性の高い方法が良いだろう。
前述のように、勝者のメンタリティには3つの効果がある。
裏を返せば、この3つの効果を生み出す存在や条件を作れば、勝者のメンタリティに近しい状況を作れる。
その状態で幸運に恵まれ、結果を手にすることができれば、そのメンタルは本物になるはずだ。
ストーリーを知る存在
シンプルなのは勝利への道筋を知る人間を呼んでしまうことだ。
ユベントスがクリスティアーノ・ロナウドを獲得したのもこれが理由である。
あるいはPSGのリオネル・メッシやセルヒオ・ラモス獲得もそれに当たる。
他にも大舞台の経験が豊富な人材をスカッドに加えるのも有効だ。
彼らは勝ち筋を知っており、勝利の経験も多い事が考えられる。
もちろん監督でも良い。
こうした人材をスカッドに加え、中心としたい。
- 勝利へのストーリーを知る現場のプレイヤー
彼だけで違いを出せますし、大事なゲームの大事な局面でしっかりゴールを決められる選手は、世の中にそうそういるものではないですしね。
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雰囲気を変える存在
次は雰囲気のトリガーだ。
勝ち方を知っている存在はどのチームも渇望するが、意外にもこのジョーカー的存在は手薄だ。
メッシやロナウドを獲得しても上手くいかないのは、このような雰囲気変換トリガーがいないからでもある。
ジョーカー、などというとそれらしいが、実際にはかなり戦力外に近い扱いをされているような選手が望ましい。
そのような選手は「振り幅」を持っているためだ。
戦力外からヒーローに、というのは、単なるベンチメンバーの活躍より振り幅が大きい。
そしてその振り幅こそが、「雰囲気の変換力の高さ」となるためである。
このような選手が活躍すると「出来すぎている」とか「運命的」と感じるだろう。
勝利が宿命付けられていたような気さえする。
これが「ストーリー」にもつながるのだ。
またこの点では在籍年数の長い選手や下部組織出身の選手でも良いだろう。
勝者のメンタリティを獲得するには、この振り幅をもたらす存在が必要なのではないかと考える。
ではどのチームもオリギを取れば良いのかとかいう話ではない。
というより、実際どのチームにもオリギはいるだろう。
高額な移籍金でやってきたのにさっぱりな選手とか、全然点の取れないFWとか。
不貞腐れたり、自信を失ったり、ときにはサポーターからも揶揄されたりする。
このような選手をいかにワンチームとして繋ぎ止めているか。
その瞬間が訪れたときに、活躍できるようなコンディションにしておくか。
控えではなくジョーカーにしているか。
これを左右するのは指揮官の振る舞いである。
また彼らがトリガーとなったときに、それを最大限爆発させるのは、周りで見守るサポーターである。
したがって勝者のメンタリティを手に入れるためには
- スキル不足の選手のやる気を保つモチベーター的指揮官
- トリガー発動時に爆発させるファンやサポーター
の存在を加えたい
1シーズンだけなら、ライバルが失敗したり、すべてが上手くはまったりして勝てるかもしれない。しかし“勝者のクラブ”になるためには、別の要素が必要になる
私の目標とは、クラブとともにインテルをそのレベルへと引き上げること。たった1人の選手の補強や指揮官の能力だけで頂点にたどり着けるものではない。
目標を達成したと言えるのは、我々が対戦相手にとってたった11人の選手だけでなく、価値観を共有する1つのグループ、アイデンティティとして感じられるようになった時だろう
インテル指揮官コンテが語る勝者のメンタリティ「簡単に勝利できると思われがちだが…」
スタンドで試合を見る人々は楽しむというより一緒に戦っている。
だから、(リバプールの)ミスに対してため息などは発生しない一方で、相手選手がミスしようものならスタジアム中が一気に反応する。
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優勢を扱える存在
優勢を掴んだ時、求められるのはその維持である。
特に重要なのは指揮官だ。
ピッチ外の客観性と、ともに戦う存在という主観性を併せ持つ。
イーブンな現実と優勢な心情を考慮した最適解を提案したい。
逆に指揮官の現実認識と、メンタルに合わせたプランを間違えると難しくなる。
グアルディオラの奇策癖はやり玉に挙げられるが、客観と主観のミステイクとも言えるのではないか。
もちろん一人での決断は困難であり、コーチ陣やあるいは選手内に参謀役がいることも良い
- 客観と主観のバランスが取れたリーダーやブレーン
アジアカップの決勝という大事な舞台で、僕がセンターバックからボランチに行くことによって、ボランチは大事なポジションだし、バランスが崩れるんじゃないかと思った。
チームのためを思ったら、センターバックにいたほうがいいと思って。直感が働いて、『無理』と言った
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まとめ
というわけで今回はチームスポーツにおける勝者のメンタリティについて考察してみました。
難しいですね。
なかなか一朝一夕で加えられるものではないと思います。
伝統ガーとか、歴史ガーとか言うのは楽ですが、それで逃げるのはズルいなということで「出来る限り再現性の有りそうな勝者のメンタリティを手に入れる方法」について考えてみました。
- 勝利へのストーリーを知る現場の人間
- チームに一体感をもたせ、トリガー枠をモチベートする指揮官
- 雰囲気の変換を最大化させるファン
- 客観と主観のバランスの取れたリーダー
これらを揃えて色々運とかに恵まれて勝てば、まずは勝者のメンタリティ獲得に近づくのではないでしょうか。
というわけでアラブの方、お金振り込んでおいてください
それではまた。
~おしまい~
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