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救世主と呼ばれた男。アルバロ・モラタ、激動の1年半

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こんにちは。今回は個人的な見解です。賛否両論あるかと思いますが、悪しからず。

期待

「頼む、モラタ。なんとかしてくれ」
17-18シーズン開幕戦。時間は後半14分。世界中のチェルシーサポーターが24歳の新戦力に悲壮なまでの期待をかけていた。もう既にプレシーズンマッチでの不調やプレミア初挑戦であることを気にしている余裕はなかった。

相手はバーンリー。チェルシーもけが人や出場停止でベストメンバーを揃えられなかったが、昨季アウェーで全く成績が出なかったチームとのスタンフォードブリッジでの開幕戦。不安要素は少なくなかったが、昨季首位vs16位。さすがに勝てるだろうという楽観的な予想が漂い、むしろ主力欠場の機会をものにした若手FWジェレミー・ボガや、プレシーズンで好調だったFWミシー・バチュアイの活躍を期待する声が上がった。

しかし開始14分で試合とチェルシーサポーターの浅はかな期待は打ち砕かれる。ギャリー・ケイヒルの軽率なタックルにクレイグ・ポーソンは迷わずレッドカードを提示。主将の愚行の余波を受けたのは気鋭の若手であり、ボガはわずか18分でこの試合のみならず、チェルシーでのプレーを終えることとなった。この試合ではさらにセスク・ファブレガスも退場しており、試合のコントロール含め主審の判定には疑問が残った。ただし経験豊富なベテランにはあるまじき行為だったのも事実だ。

スクランブル発進となったアンドレアス・クリステンセン、ローマから新加入のアントニオ・リュディガーの若き新戦力が脇を固めた3バックは瞬く間に瓦解。混乱の中3点を奪われ、攻撃陣も機能しない。試合の趨勢は決したかに見えた。

そして迎えた59分。不発のバチュアイに代わり100億超の移籍金で加入したアルバロ・モラタがプレミアデビューを果たす。ロメル・ルカクがチェルシーに復帰し、モラタはマンチェスターユナイテッド移籍間近と囁かれていたが現実は逆であった。

鮮烈

そのモラタが眩い煌めきを見せたのはそのわずか10分後。ウィリアンのクロスに頭から飛び込むと、ここまで好守を見せてきたトム・ヒートンが動けないコースに叩きつけた。
セスクが退場し9人になった後もこの後ホットラインを形成することになるセサル・アスピリクエタからのボールを頭で絶妙にフリック。ダビド・ルイスの追撃弾をアシストした。

結局試合は2-3で敗れたが、ネガティブな面ばかりが残された17-18シーズン開幕戦の中で唯一の希望となった。鮮烈なデビュー戦での1G1A。否が応でも高まる期待。そしてそれがモラタを次第に追い詰めることになるとは思いもしなかった。

「alvaro morata debut goal」の画像検索結果
(Daily Expressより)チームの期待を一身に背負った

躍動

その後も素早くチームに馴染み、得点を量産する。特にヘディングでのゴールが多く、同じスペイン代表のアスピリクエタのアーリークロスを合わせる形はチェルシーの攻撃の軸になった。アトレティコ・マドリーやマンチェスターUといった強豪相手にも得点を奪い、ジエゴ・コスタの穴を完璧に埋めたかに思われた。
前半戦唯一の連敗となったマンチェスターシティ戦、クリスタルパレス戦では負傷のためほとんど出番はなく、むしろチームがモラタに頼り切っている構図が明白になるほどに。

2017年を終えたときにはチームは2位に。既に独走状態に入っていたシティの背中は遠いながらもなんとか見えてきた。

暗転

しかし年明けのアーセナル戦からモラタとチームは長いトンネルに入る。再三の決定機逸で点差を広げられないまま後半ATに入るとエクトル・ベジェリンに被弾し同点に追いつかれる。直後にアスピリクエタからのパスでモラタにチャンスが訪れるが、これも逃してしまう。結局チームは勝ち切れず、このまま坂を転げ落ちるかのように失速する。

その後ボーンマス、ワトフォードに計7失点という衝撃的な連敗。この2戦はモラタが不在だったが、それはかねてから訴えていた背中の痛みによるものだった。またこの頃から相手を背負うプレーができなくなり、転倒するも笛が吹かれず苛立つというシーンが増えてくる。後に本人も語っているが、背中の負傷を圧しての出場の結果なのは容易に想像できる。
結局WBA戦で復帰したが、そこからリーグで上げたゴールはわずかに1つ。チームもCL権外の5位に終わり、FA杯は制したが、決勝のスタメンには「収められる選手」を求めた結果としてのオリヴィエ・ジルーが名を連ねた。

それを乗り越えるのが超一流だ、という意見は前提としても言いたいのは、モラタに足りなかったのはゴール前での落ち着きなどではなく、チーム状況を考えすぎない、ある種の「ふてぶてしさ」や「無頓着さ」だったのではないか。自身不在のゲームでの不甲斐ない戦績も必要以上のプレッシャーとなり、強引な復帰に至った可能性もある。負傷以上に大きなものを、サポーター含めチェルシーはモラタに背負わせてしまったのかもしれない。

100%でない時期で失った自信は、身体が全快しても戻ることはなかった。

得点を量産していた時期ですらイージーシュートをミスするシーンは散見され、高い「成功率」を誇るタイプではない。モラタだけでなく継続的にチャンスを供給できなくなったチームにも少なからず問題はあったことは、いずれにせよ間違いない。

激動

18-19シーズンよりチェルシーは新監督にサッリを据え、そのサッリはW杯で出遅れたジルーの調整不足もありモラタをファーストチョイスに選んだ。
第2節で因縁のアーセナル相手に得点を決め、第11節クリスタルパレス戦では久々の複数得点をマークするなど復調の兆しは見せた。
自身も背番号を一新し、精神科に通いイップスとも言われたメンタル面の問題に向き合うなど、懸命にもがく姿がそこにはあった。


しかし第11節後は再び得点に見放されると、アザールの0トップでシティの無敗を止めたこともあり、一気にCF3番手まで序列が下がった。さらにゴンサロ・イグアインが今冬に加入し、4番手になる可能性も少なくない。

FA杯などのカップ戦でこそ得点は重ねたものの、それ以上に決定機を外すシーンがフォーカスされた。
個人的な見解だと多少ミスがあっても1試合1点取ればCFは叩かれる必要はないと考えているのだが、モラタはイメージが先行し必要以上の非難を受けていると感じた試合もある。

結局リーグ戦ではベンチ外が続き、冬の移籍期間の間にアトレティコ・マドリーへの加入が濃厚。主力にケガ人が多いアトレティコでレギュラーとして再起を期すと思われる。

最後に

確かに現在のアルバロ・モラタにチェルシーのCFを任せられないのは事実かもしれない。だがそれはモラタだけの責任だろうか。彼自身が「アイドル」と語るフェルナンド・トーレスという「前例」があったにもかかわらず、だ。

チェルシーは世界的に見れば大きなクラブだ。選手を育てながら、というクラブではない。最優先は勝利であり、それに貢献できない選手はスカッドから外れる。
しかし選手を守らないことはそれとイコールではない。期待とプレッシャーは二律背反ではあるが、チームは彼一人にあまりにも大きなものを背負わせすぎてはいないかったか。

日本ではインフルエンザでも出勤させた会社は叩かれる。では負傷した選手を出させるチームは?それが彼の意思でも?彼しかいない状況なら許されるのか?
背中のケガは完治したのかもしれないが、その時失った自信は取り戻しきれないままの状態が続いてる。

チェルシーに、今冬また新たなCFが加わった。今後も多くの有望なFWがチェルシーに加入するだろう。まだ見ぬ彼らが「第2のアルバロ・モラタ」になるかならないか。我々サポーターを含め、チームの姿勢が問われるのはその時であり、もしもこのままならいつまでたっても「CFが活躍できないチーム」のレッテルは剥がれないだろう。

~おしまい~


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コメント

  1. […] 救世主と呼ばれた男。アルバロ・モラタ、激動の1年半 私は好きですよ […]

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