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クルト・ズマ、取り戻した迫力とさらなる進化

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はじめに

皆さんこんにちは。私です。

え?最近更新してない?気のせいです。

さて我らがイングランドプレミアリーグも残すところあと1節になりました。

新型コロナウイルスの影響で約3か月もの中断を余儀なくされましたが、なんだかんだでシーズンは終わろうとしています。

リバプールが優勝を早々に決めた一方で、CL権争いは最終節までもつれる白熱の展開。

第37節ではポールポジションにこれまで立っていたレスターが5位に転落、同じく勝点1で決めきれるチェルシーも、チャンピオンチーム相手に5失点の敗戦。

一足早く試合を終えていたマンチェスターユナイテッドも、かつての監督が率いるウェストハム相手に勝ちきれない試合に留まりました。

最終節はそのレスターとマンチェスターUが激突。

勝った方の来季CL出場が決定。

やや優位なチェルシーも難敵、6位ウォルバーハンプトンとの一戦が控えます。

さてそんな激熱の最終節前、そして今季リーグ戦最後(のはず)の個人フォーカスは、クルト・ズマです。

カムバック

クルト・ズマが存在感を増している。

軽率なプレーが散見されるDFアントニオ・リュディガーや、フィジカルで敵FWに後れを取るDFアンドレアス・クリステンセンを差し置いて、ここ6試合は連続でスタメン出場。

最終盤でCBの軸になりつつある。

一度大きなキャリアの暗転を経験した男。

その彼がついに本当の意味でのカムバックを果たそうとしている。

ポテンシャルとケガ

今シーズンのズマのスタートは最悪だった。

マンチェスターユナイテッドとの開幕戦ではクリステンセンとコンビを組んだが、自身もPKを献上するなど4失点。

かつて圧倒的な身体能力で対敵するFWからボールを刈り取っていた姿は、どこにもなかった。

クルト・ズマのチェルシーデビューは早い。

2014年、まだ10代の時にチェルシーが獲得を発表する。

時は第二次モウリーニョ政権。

スタメンのCBには復活を遂げたDFジョン・テリーと当時イングランド代表のDFギャリー・ケイヒルが名を連ね、堅守で勝点を重ねていた。

異国の地からやってきた若者には、活躍するどころか、試合に出ることすら難しいように思われた。

しかしズマのポテンシャルはそんな前評判をあっさりと打ち崩す。

卓越した身体能力から繰り出される鋭いタックル、分厚い身体で群雄割拠のプレミアFW陣を弾き飛ばす。

ケイヒルがベンチを温める時間も長くなった。

もちろんこれには周りの環境も大きい。

守備の構築に高い評価のあるジョゼ・モウリーニョが監督だったことをはじめ、隣には補って余りある経験値を持つ主将テリー、右SBには対地空と攻撃力にも秀でたDFブラニスラフ・イバノビッチ、左SBには現在のキャプテンであるDFセサル・アスピリクエタが並ぶ布陣が基本。

全員がDFリーダーになりうる状況で、ズマはそのパワーとスピードを生かすことに集中できた。

ついにはフランス代表からも声がかかるようになったズマ。

しかしユーロも見えてきた2016年、彼のキャリアが暗転する。

前十字靭帯断裂の大ケガだ。

ケガからの復帰

半年をかけてピッチに帰ってきたズマ

16-17シーズンは3バックを採用したアントニオ・コンテのもと、主に終盤のクローザーとして出場。

アスピリクエタをWBにあげて右CBにズマを入れるのがコンテの勝ちパターンでもあった。

しかし、ケガ前に見せていたアグレッシブなプレーはなかった。

翌シーズンはストークにレンタル。出場機会こそつかんだが、チームは降格。

また大味なサッカーを展開するストークは、課題である足元の成長する環境ではなかった。

18-19シーズンは中堅の中でも存在感を放つエヴァートンにレンタル。

ここでも中盤戦からレギュラーを獲得。

ただしビッグ6の牙城を崩すことを目論む開幕当初の目標からは程遠い位置でチームはフィニッシュすることになる。

正直私はこの2チームでの試合をすべて見たわけではない。

しかしレンタル中のズマは、あの頃を知るチェルシーサポーターからすれば物足りなく映ったのではないか。

少なくとも私にはそう見えた。

ケガの回復としては終了したのかもしれない。

しかし半年の間に失っていたものはそれ以上だった。

もともとサッカーIQの高い選手ではなく、判断を誤ることやマークを見失うことも少なくない。

ケガで失った時間と不安定な環境はそれをさらに加速させてしまったように見えた。

そして彼自身が最も得意とする迫力あるプレーを失っていた。

ここから先10年は安泰。

そうチェルシーサポーターに言わせたポテンシャルの持ち主は、よくいるCBに成り下がりかけていた。

復帰と復活

2シーズンのレンタル、力のある中堅クラブで出場機会をつかんでいたこと、そしてレンタル先であるエヴァートンも獲得を熱望していたこと。

これらを考えれば換金される可能性が高かった。補強禁止がなければかつての面影なくチームを去っていただろう。

リュディガーの離脱とDFダビド・ルイスの移籍で昨季のレギュラーCB2人を同時に欠くフランク・ランパードは、ズマをスカッドに加え新シーズンを戦うことを決意する。

しかし前述のように開幕戦は散々な出来に終わる。

その後フィカヨ・トモリの台頭、そして経験で秀でるリュディガーの復帰でついにベンチに降格する。

この半年がチェルシーの選手として過ごした最後の期間になる、という見方も少なくなかった。

ところが新型コロナウイルスによる中断期間ののち、状況が一変する。

中断明けから精彩を欠くリュディガーを下げ、ビルドアップに長けるクリステンセンと対人に優れるズマという布陣をランパードは選択。

補完関係のある二人は強敵マンチェスターシティを撃破する。

ところがその翌節からまたも潮目が変わる。

フィジカルに長けたFWミカエル・アントニオをクリステンセンは止めることができず、1G1Aの活躍を許す。

またリュディガーも不用意なクリアで失点のきっかけを作るなど、CBのミスから、逆転負けを喫してしまう。

次節の相手はこちらもフィジカル勝負を得意とするFWトロイ・ディーニ―擁するワトフォードだった。

ランパードはこの試合でズマを起用。クリーンシートを達成する。

ズマも好守で枠内シュートを0本に抑えた。

続くクリスタルパレス戦でもズマが先発。

試合は一進一退のシーソーゲームとなるが、途中出場のFWタミー・エイブラハムの得点でチェルシーが前に出る。

終了間際攻勢に出るパレスだったが、GKケパ・アリサバラガの好セーブやポストに救われ、何とか失点を免れる。

ところが残り一分。

鋭い縦パスが完全にフリーだったFWクリスティアン・ベンテケにわたってしまう。

そのままエリア内に侵入するベンテケ。

反応したのはズマだった。

鋭く、深く、そして豪快なスライディングタックル。

間一髪でボールをかき出し、チームのピンチを救ったのだ

7:34からズマの果敢なタックルだ

それはまさに、「10年後は安泰」と信じさせたあの頃のプレーだった。

この最終盤、ついにクルト・ズマは5年越しで、本当の意味での「復活」を果たしたのだった。

進化

そしてランパードはレギュラーCBをズマとリュディガーのコンビに固定。

3バックと4バックを使い分けながらも、身体能力に優れた2人を並べることを選択した。

ただしその場合、ビルドアップに弊害が出る。

対人はどちらも強いが、パスやクレバーな持ち上がりではクリステンセンに分があり、実際彼を起点とした展開が多かった。

ところがFA杯マンチェスターユナイテッド戦、第37節リバプール戦で3バックの中央を務めたズマから、正確なキックが飛び出すようになる。

なぜかは全くわからないが、なぜかこのタイミングでズマのフィードの才能が開花したのだ。繰り返すがなぜだかはさっぱりわからない。

全く理解不能なタイミングでこれまで大きな課題と言われていたキックの質が上がっている。

理由はわかっていない。

最終戦

もうまもなく、未曽有の危機に襲われた19-20シーズンの最後の一節がキックオフとなる。

最後の最後までメンバーが読めなかったチェルシーのCB陣だが、布陣はともかく、ズマのスタメン出場は決定的だろう。

相手はウルブズ。FWラウール・ヒメネス、FWアダマ・トラオレら強力な攻撃陣を擁する難敵だ。

この試合、チェルシーは引き分け以上で来季CLの出場が決まる。言

い方を変えると、0点に抑えてさえいればこの試合に関しては「勝利」なのだ。

当然DF陣にはより一層の奮闘が求められる。

ついに「あの頃」の輝きを取り戻したクルト・ズマ。

チェルシーが最後に選んだバックラインの軸。

さらなる進化も遂げた25歳が、チェルシーに自身のミドルネームをもたらすラストピースになるだろう。

~おしまい~

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