はじめに
1番の敵は「この試合に勝てれば」という思い。
得点者
シェフィールド・ユナイテッド 2-2 チェルシー
得点:前半32分 ジェイデン・ボーグル、後半48分 オリバー・マクバーニー(シェフィールド・ユナイテッド)/前半11分 チアゴ・シウバ、後半21分 ノニ・マドゥエケ(チェルシー)
試合前
前節は壮絶な打ち合いを制し、劇的な逆転勝利を収めたチェルシー。
99分までの一点ビハインドをノニ・マドゥエケ、コール・パーマーの活躍でひっくり返し、天敵のマンチェスター・ユナイテッドを撃破した。
ユナイテッド相手には2017年以来となる勝利で歓喜に湧いたスタンフォード・ブリッジ。
ハットトリックを記録したパーマーには最大限の賛辞が送られた。
一方で試合の展開や運び方、采配の拙さが目立ったのもまた事実であり、劇的勝利の熱狂に覆い隠してはいけない。
不安定な内容、安定しているのはやられ方だけという中身の改善は喫緊の課題である。
また今季のチェルシーで指摘される「継続性」についても触れたい。
これまでも強豪相手に好ゲームを繰り広げることはあったが、その次の試合では悪い意味で別チームのようになってしまう。
試合ごとにムラがあるのか、テンションがプレーに直結してしまうのか。
ビッグマッチの翌節や、ここを勝てば上位が見えるという試合で結果を残せていない。
そしてこのシェフィールド・ユナイテッド戦はまさにその立ち位置だ。
ブレイズは、2月以降白星がなく、勝点15で最下位に沈んでいる。
残留圏の勝点と残り試合数を鑑みると、いよいよ臨界点に来ている様相だ。
アウェーマッチではあるものの、チェルシーからすればしっかりと勝点3を掴むべき相手である。
ところが、この手の試合に弱いのがチェルシーである。
このシェフィールドの1つ上の18位バーンリー相手にもつい先日勝点を落としている。
ホームゲーム、しかも数的優位、コンパニ監督も退場という状況で勝点1に留まったのだ。
またこの時期の降格チームは侮り難く、毎シーズンどこかのチームが火事場の馬鹿力で逆転残留を勝ち取っている。
ブレイズも直近のリバプール戦は敗れこそしたものの、粘り強い戦いで首位を争うチームを苦しめている。
今季のチェルシーにとっては、様々な要素で難しい相手になるだろう。
お互いに中二日の試合は双方がターンオーバーを敢行。
チェルシーは前節殊勲のPKを奪取したマドゥエケをはじめ、トレヴォ・チャロバーとチアゴ・シウバ御大が登場。
大黒柱のパーマーやエンソ・フェルナンデスらの入れ替えはなく、手堅く勝点3を狙う。
試合内容
ディサシを右SBに置き、チャロバーとチアゴ・シウバでCBラインを、ギャラガーを左に置く布陣をチョイスしたチェルシー。
セーフティな戦いを志向するブレイズに対し、チアゴ・シウバを起点としたポゼッションで対抗する。
10分には先発起用に応えたいマドゥエケが、鋭い突破でチャンスを作る。
するとその突破で得たCKから先制点が生まれる。
右からのCKをギャラガーが蹴ると、中央でフリーになったチアゴ・シウバがボレー。
周りのブロックで完全に空いたベテランが丁寧なミートでゴール左に流し込み、理想的な展開で先制点を奪う。
その後は双方運動量が上がらず、試合は小康状態に。
それでも悪くはなかったが、先制点のチアゴ・シウバがまさかのパスミス。
自陣深くで相手にさらわれ決定機を作られるが、前節同じミスを犯したカイセドが禊のカバーでシュートを防いだ。
対するチェルシーも中央に陣取ったパーマーが抜け出して左を振るが、今度はブレイズがナイスブロックを見せた。
なかなかフィニッシュまで行けないチェルシーに対し、ブレイズはホームの勢いを持って反撃する。
ハーマーのシュートはペトロビッチが抑えたが、直後にもチェルシーの左サイドを攻略。
ボーグルが角度のないところから狙うと、クロスを読んで身体を倒したペトロビッチは防ぎきれず、そのままゴールに吸い込まれた。
中盤がほとんど機能しない甘すぎる守備で、今日も安い失点を献上してしまう。
失点後もテンポの上がらないチェルシーに対し、サイドからの攻めを展開するブレイズ。
カウンターに活路を見出したいチェルシーだったが、ククレジャのクロスはわずかにジャクソンに合わなかった。
課題とされるセットプレーは今日も変わらず。
試合通じて基本的に相手が先に触るため、必ず冷や汗をかくことになった。
エンソ・フェルナンデス、モイセス・カイセド、コナー・ギャラガーの3枚は明らかに身体が重く、中央起用のパーマーもクオリティを発揮しきれない。
ユナイテッド戦の疲労が響いているのは明らかで、コンディション把握を間違えた印象は否めなかった。
最下位相手に納得できない内容で、前半45分を終えることになった。
後半立ち上がりは今日も悲惨な出来。
HTの15分で何を話しているのか知らないが、毎回毎回、気合を入れ直した相手に圧倒されている。
この試合も例に漏れず、マクバーニーに惜しいヘディングを、にロングスローの流れからハーマーに強烈なミドルを浴びるが、枠を外れて事なきを得た。
後半の悪い流れを何とか耐え抜いたが、ポチェッティーノに動く気配はなし。
ベンチには相応のカードもあったはずだが、ただ受けるだけだったのは理解に苦しむ。
時間経過とともにパーマーやニコラス・ジャクソンにボールが入るようになるが、決定的なシーンは作れない。
重たいムードを振り払ったのは、やはりフレッシュな快速レフティーだった。
中盤でジャクソン、パーマーと繋ぐと、早いタイミングでパーマーはマドゥエケに展開。
エリアに近い位置で受けられたマドゥエケは得意のカットインから左足を一閃。
ニアに強烈なシュートを叩き込み、勝ち越しのゴールを奪った。
追加点を狙うチェルシーはパーマーも遠目から打つが、これはセーブされた。
アシストの格好になったパーマーを下げ、チュクエメカをようやく投入したチェルシー。
明らかに中盤3枚は限界を迎えていたが、その次の交代はマドゥエケ→ムドリクと手を付けず。
捨て身のブレイズは長い距離でも放り込みを選び、アバウトなボールはチェルシーの脅威に。
セットプレーからまたもフリーでシュートを浴びるが、ここはペトロビッチが高い跳躍力を生かしたセービングで逃れた。
守護神のビッグセーブの直後、バディアシル、カサデイを投入。
守備力を高め逃げ切りを図ったポチェッティーノだったが、この采配が完全に裏目に。
長いボールにバディアシルが競り負けると、カサデイもクリアしきれず、最後は混戦から抜けたマクバーニーに押し込まれた。
再びの軽い失点後に、反撃の時間も選手も残されてはいなかった。
またも前節の勝利を無駄にする愚かな試合で、勝点2を落とす結末となった。
選手採点
GK
ジョルジェ・ペトロビッチ 5.5
完全に崩されたとはいえ、1失点目は体に当てただけに悔しさが残る失点に。
ミドルシュートは何とか対応したが、ブレイズ得意のセットプレーには苦しんだ。
フィジカルバトルで押され気味で、パンチングの距離はもう少し欲しいところ。
最終盤ではそのセットプレーから危険なシュートを受けるが、身体能力を生かしたセーブでチームを救う。
しかし最後の失点は防げず、またも複数失点。
チームを救うことはできなかった。
DF
チアゴ・シウバ 6.5
セットプレーから高い技術で先制点をゲット。
その後は落ち着いたプレーを見せていたが、らしくないミスが出るなどやや不安定な出来。
持ち前のテクニックや予測などは相変わらずの素晴らしさだったが、苦しむチームを救うまでには至らず。
とはいえ大きな先制ゴールも含め、及第点以上とはしたい。
今季がチェルシーでのラストシーズンと目されるが、こんなシーズンにしてしまい申し訳がない
アクセル・ディサシ 5.5
右SBで先発出場。
攻撃面でのアクセントを加えることはできなかったのは一定仕方ない部分があるし、マドゥエケにとっては良かったのかも。
ただ本業の守備でも軽い対応が目立ち、易易とクロスを上げられてしまうのは看過できない。
空中戦でも存在感を発揮できず、自身の強みを活かせなかった。
トレヴォ・チャロバー 5.0
CBとしては厳しい出来。
陸空のデュエルで苦戦し、気合のこもったブレイズの攻撃を止めきれず。
ならばとビルドアップで貢献したかったが、むしろ受けてに難しいプレーを強いる渡し方しかできなかった。
そもそもディサシがいるのなら右SBでの起用も合ったのでは?
バディアシル同様、スタメン定着を推しづらい。
マルク・ククレジャ 6.0
何度も上下動を繰り返すが、その先でクオリティを出すには至らず。
1失点目では完全に裏を取られてしまった
ただ全体的に活力を欠くチームの中ではかなり頑張っていた方ではないか。
後半まで運動量を維持しプレッシャーを掛けただけに、下がってからの失点はいたたまれない。
MF
モイセス・カイセド 5.0
前節自身が犯したようなミスを今度は味方が起こしてしまうが、禊のブロックで失点は回避。
一方で疲労もあったかデュエルで強さを発揮できず、中盤のフィルターとして貢献できず。
攻守ともに中途半端な出来となり、らしいシーンはほとんどなかった。
ビルドアップにも効果的な絡みがあまりできなかった。
代えがいないのもまた事実ではあるのだが、さすがに休暇を与えたい。
エンソ・フェルナンデス 5.0
明らかに疲労の極地。
得意のパスも精度を欠き、判断の部分でも雑な方向に走ってしまいがちに。
出来ることをこなそうと必死に戦っている姿勢は認めたいが、このコンディションで出すのは可哀想と思わざるを得ない。
普段では難なくこなすようなプレーも息切れしていた印象。
出場の判断をした監督やメディカルの責任が重いだけに、この採点を乗せるのは辛い。
コナー・ギャラガー 5.5
慣れない左MF起用で完全に戦術の犠牲者に。
得意なプレーはほとんど出せず、攻撃の停滞を招いてしまった。
疲労が溜まっているのはエンソ、カイセド同様明白で、その中で不慣れなポジションはあまりにも荷が重かった。
終盤は右MFに移り、ここでも付加価値を出せたとは言い難いが、最後まで走った点は褒めたいところ。
不屈のダイナモではあるが、一旦チャージの時間が欲しい。
FW
コール・パーマー 6.5
マドゥエケに最も得意とするポジションは譲り、トップ下でスタート。
ボールに絡む機会は少なくなり、また彼も相当に疲れが見えた。
パスが引っかかるシーンが目立ち、いつものクオリティではなかっただろう。
それでも立ち位置を微修正し、なんだかんだアシストを記録するのは立派。
マドゥエケとの連携は今後のチームの宿題だろう。
ノニ・マドゥエケ 7.0
前節での活躍を買われ先発に抜擢。
唯一コンディションが整っており、軽快なプレーで右サイドを何度も切り裂く。
先制点につながるCK奪取に加え、一時勝ち越しとなる強烈な左足も見事。
なかなか判定には恵まれなかったが、腐らず守備でも貢献。
勝っていればMOMだったが、、、
ニコラス・ジャクソン 5.5
鋭いターンや高いキープ力でチャンスメイクには貢献。
一方でエリア内でのチャンスは判断ミスもありシュートに結び付けられなかった。
CFとしての評価とチームプレーヤーとしての評価が分かれる選手ではあるが、そろそろ得点が見たいところ。
代役不在の中、頑張っているのはよく伝わるのだが。
チームを勝たせるゴールがほしい。
交代選手
カーニー・チュクエメカ 5.5
パーマーに代わり途中出場。
さすがに同じようなクリエイティビティは見せられなかったが、フィジカルの強さは随所に発揮。
ただ全体的に運動量が落ちたチームの中で、もう少し走ってほしかった。
そこが改善されれば、貴重な中盤のターンオーバー要因になれるのだが
ミハイロ・ムドリク -
ブノワ・バディアシル -
チェザーレ・カサデイ -
監督
マウリシオ・ポチェッティーノ 4.5
完全なる采配ミスで勝点を落とす。
19位、20位と立て続いての引き分け、それも全く同じ展開と一体何を指導しているのか。
中盤の疲労や配置ミスは誰の目にも明らかだったが、手を打つことなく時間を浪費。
課題とされている部分が改善されることは一向になく、全てが選手頼みであることが露呈しただけの試合だった。
采配自体も消極的で、このあとタイトルを掴む監督のそれには見えない。
チェルシーが目指しているのは上位への復帰であり、中堅を率いているわけではない
今のチェルシーが求める素質を有しているか、疑問が非常に多く残る采配だった。
終わりに
今週も頑張りましょう。
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