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消えた「再現性」と気迫。第23節ビッグロンドンダービーで見えた弱点

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こんにちは。今日はプレミア最大のダービーの採点です。4位争い直接対決、2節のリベンジマッチ、ペトル・チェフの引退、イグアインの噂など様々な状況が渦巻く中行われた一戦です。

結論から言うとアーセナルが2-0の完勝。チェルシーは枠内シュートが1本(それも覚えていないような)に終わるという内容面でも大きく差をつけられての敗戦となりました。

今日は完封されたチェルシーの今の問題についてです。正直言って確実なことまでは言えませんが、今節の結果から少し考えてみましょう。

それでは!

アーセナルvsチェルシー

     2-0
得点者:ラカゼット(14分)
    コシェルニー(39分)

「koscielny」の画像検索結果
(アーセナル公式より)得点と果敢なシュートブロックのコシェルニー。MOM級の働き

気迫を見せたアーセナル

アーセナルのスタメンは、GKにベルント・レノ、DFラインが右SBにケガから復帰のエクトル・ベジェリン、主将ローラン・コシェルニーとソクラティス・パパスタソプーロスの2CB、左SBにセアド・コラシナツ。ここまで3バックを採用することが多かったが、中盤センターの封殺を意識したか、4バックを採用。
その中盤はダイヤモンドを組み、アンカーにグラニト・ジャカ、IHにはマテオ・グェンドゥージとルーカス・トレイラ。トップ下にはアーロン・ラムジーが構え、アレクサンドル・ラカゼットとピエール・エメリク・オーバメヤンが2トップを形成。

立ち上がりから鋭い出足でチェルシーのビルドアップを牽制し、高い位置でのボール奪取から好機を連発。スピードのある2トップがシンプルな攻撃を見せる。セットプレーでもあらかじめ準備してきたショートコーナーから決定的なシーンも作る。
結局13分にベジェリンが低く入れたボールをラカゼットが叩き込んで先制するが、エリア内で足元に収めてDFを見ながらニアサイドに打ち込むのはラカゼットの十八番。またアシストとなったベジェリンが決してハイクロスが上手くないことを考慮すると、一番警戒すべき形だった。それでも得点になったのは13分までにハイクロスから決定的なシーンを何度か作られていたからで、意識が頭上に向いていた可能性がある。

またセットプレー崩れから生まれたコシェルニーの得点は肩に当たりコースをついたラッキーなものだったとはいえ、その前のトレイラのFKにフィジカルのあるコラシナツと小柄なペドロを競らせたシーンは狙っていたはず。また集中が切れ、完全にボールウォッチャーになったチェルシーDF陣に対し、身体をゴールに向けて飛びこんだコシェルニーの姿勢が報われたとみていい。

何より特筆すべきは各々がハイタスクをしっかりこなした点にある。入りから全員のハイプレスで主導権を握り、2トップの両方でさえエリア内にまで戻って献身的な守備を見せた。後半は飛ばしすぎか、より長いボール保持とフォーメーションの弱点である大外を取られたが、途中出場のメンバー、さらにエミレーツのサポーター含め全員が高いモチベーションを維持しチェルシーを上回った。

停滞したチェルシー

ここ最近の得点力不足はアルバロ・モラタやオリヴィエ・ジルーの決定力不足と目されており、ゴンサロ・イグアイン獲得の話も本格化していたが、この試合で露になったのはCF云々ではないシステムの不備だった。

先発はいつも通り、これも過密日程のプレミアでは苦しい。GKにケパ・アリサバラガ、DFは右からセサル・アスピリクエタ、アントニオ・リュディガー、ダビド・ルイス、不調が囁かれるマルコス・アロンソ。MFはアンカーにジョルジーニョを置き、IHにエンゴロ・カンテとマテオ・コバチッチ。FWは最近積極的に採用されている(採用せざるを得ない)エデン・アザールの偽9番。脇をペドロ・ロドリゲスとウィリアンが固めた。

アーセナルがこれまでの3バックから転換した一方で、メンバー、フォーメーションともに変更なし。ここ最近疲労の見えるアロンソの出来も気になる。

結局は2-0の敗戦となったが、選手のミスやクオリティの差というよりもチームとしての問題点が多いのが目についた。

失った再現性

現状チェルシーの最大の課題は再現性のある攻撃ができていないことにある。シーズン序盤まではジョルジーニョを起点とした左での展開→右でのフィニッシュという形ができていた。(再現性ができていたころに関しては5節カーディフ戦の記事へ

ところが現状計算できる攻撃オプションはダビド・ルイスのロングフィードに斜めの走りでエリア内に侵入する形のみである。事実アーセナル戦でもペドロがこの形で決定的シーンを迎えている。
確かに有効な手ではあるが、あくまでそれはポゼッションのアクセントだったはず。それ1本で勝てるほど甘くなく、実際1度目は上手くいったが、2度目のフィードはコラシナツがしっかりと対応している。
ジョルジーニョが封じられた際の「ショートパスによる」プランBが一切ない。ルイスのロングボールか偶発的なゴラッソに頼るしかないのが現状だ。

(Gmal.comより)ラムジーやラカゼットの守備の前にまたも消されたジョルジーニョ

後塵を拝したメンタル

またモチベーションの面もどうだろうか。今季チェルシーが鬼気迫る、という姿を見せたのは2-0で勝った第16節マンチェスターシティ戦くらいだろう。同じような敗戦となった第13節トッテナム戦もそうだが、相手の迫力に押され立ち上がりに主導権を握られ先制点を奪われることが多い。
試合後サッリもメンタル面の準備が足りなかったと激昂していたが、アーセナルやスパーズレベルのクオリティを持った選手が死に物狂いで向かってくるのに中途半端なプレーでは通用するはずもない。特に今季アーセナルは同じロンドンの強豪であるトッテナムとの「ノースロンドンダービー」でも卓越した集中力で勝利をもぎ取っている。

そうしたチームと戦うのに十分なメンタルの準備ができていたとは言い難い。開始40秒のルイスの危険地域でのミスや自陣エリア内でのジョルジーニョのパスミス、そして決定的となった2失点目の緩い守備に象徴されるように、集中が欠けている選手が目立った。

一方で選手だけの責任ではない。明らかにジョルジーニョのパス精度は落ちており、「鉄人」アスピリクエタにもあわや失点というミスがあった。
疲労は身体だけでなく精神にも影響をもたらすのは言うまでもない。故にこうしたメンタル的な問題はサッリのローテーション不足よる疲労の蓄積に原因を求めることもできる。さらに言ってしまえばローテーションができない選手層ながら、1.3軍レベルの実力者であったセスク・ファブレガスの後釜すら取れていないフロントにも責任の一端はある。問題はチームレベルだ。
前半終了間際に前節の再現を狙ったウィリアンがエリア内左からシュートを狙った。スライディングでコースをふさぎに行ったベジェリンと大きくふかしたウィリアンはその縮図のように映った。

見えてきた「システム上の」の欠陥

アーセナルの得点シーンはいずれもセットプレーの流れである。もちろんその守り方に関しては大いに反省の余地があるが、流れの中でのビッグチャンスは2度(それも多分に問題だが)で、正直ビッグ6相手にはこのくらいの決定機は覚悟しておかなければならない面もある。

真の課題は攻撃であり、ポゼッションをするうえでのリターンが得られていない。カウンターやセットプレーでやられるのは二律背反というかリスクであり、背負わなければならないものである。だがその分得られるべきベネフィット、すなわち押し込む圧力であったり、シュート数、エリア内への危険な形での侵入はほぼなかった。

もちろん最後の部分は選手のアイデアやクオリティにかかる部分も大きくなるが、その「最後」にチームとしてたどり着けないのが問題で、両サイドに回しウィングの独力に賭けるしかなかった。

アーセナルは大外を捨てる守備で来たが、それは大外を担当するチェルシーのSBから高精度のボールが入る確率が低い点や、深い位置までの独力での侵入がない点、さらにエリア内でワンタッチで仕留められるストライカーがいない点を考慮したと思われる。仮にチェルシーに、ピンポイントクロスを送れるキーラン・トリッピアー(トッテナム)、単騎で切り裂けるアルトゥール・マスアク(ウェストハム)やシェイマス・コールマン(エヴァートン)のような「ウイング的SB」、エリア内で存在感を示せるアレクサンダー・ミトロビッチ(フルアム)がいればウナイ・エメリも考え方を変えていたかもしれない。
全てを守るのは不可能だから、最も失点につながる可能性が低そうな部分を捨てる。そんな魂胆が見て取れる。

そして中央を固めたアーセナルはカンテにグェンドゥージ、ジョルジーニョの次に起点となりうるコバチッチに守備力のあるトレイラをぶつけ、ジャカがサポート。4vs3の数的優位で中盤を締めた。後半からは大外をいよいよ完全に奪われたが、フォーメーションをいじりながら対応。深い位置から何度か危険な折り返しを許したが、迫力を持って飛び込めるチェルシーの選手はいなかった。

今回の敗戦は確かにミスがあり、メンタル面でも問題があったかもしれない。しかし一番の問題は個人頼みの攻撃があまりにも多すぎであり、それが開始される位置が敵の急所より遠すぎる点だ。そしてそれでは「人数をかけ」「準備してきた」「強豪チームの」守備の前では効果をなさないということ(ここ最近の白星はこのうちのどれかが欠けていたから奪えた得点からである)。

対戦相手の対策が進み、チームとして確実かつ恒常的に機能する崩しの形が今はルイスのキックしかない。そしてそれもアーセナル戦では対応され始めた。
そしてこれからの対戦相手も同じやり方を踏襲してくるだろう。
これは果たしてゴンサロ・イグアイン1人で片付くものなのか。問題の根幹はいよいよ根深い。

~おしまい~

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