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ついに「本領」発揮。カイ・ハヴァーツの100%

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覚醒のシーズン

サッカーに限らず、もっと言えばスポーツ界のみならず、一般社会でも若手が突然開花する瞬間がある。

理由は経験だったり、環境変化だったり、あるいは有能な上司がやってきたからだったり。

それは俗に「覚醒」と呼ばれる。

今季のプレミアリーグでも多くの若手選手がそれに似た変化を起こしている。

おそらくはコロナ禍でより過密さを増した日程による、ターンオーバーとケガ人が増えたからだろう。

比較的層が厚いと言われる強豪チームだが、試合数も多い。

若手にとってはチャンスでもある。

チェルシーではメイソン・マウントが腕章を巻くまでになり、リバプールのカーティス・ジョーンズは数多のベテランを差し置いて先発の座に。

アーセナルでは離脱前まではエミール・スミス=ロウが攻撃のタクトを振っていた。

彼らはまさに覚醒のシーズンを迎えている筆頭だ。

既にスタメンの域を超え、中核と呼ばれてもおかしくはない存在として認知されつつある。

メイソン・マウント、開花から覚醒へ
序盤戦のゴールラッシュという開花に比べれば派手ではないかもしれないが、この変化は間違いなくメイソン・マウントというサッカー選手が新たな次元に突入したことを示している。

前代未聞のシーズンとなっている今季、ビッグ6以外のクラブの奮闘も光る。

レスターのジェームズ・ジャスティン、エヴァートンのドミニク・カルヴァート=ルーウィンは今季花開いた選手たちだ。

一定の出場機会を経て、急成長を遂げる若手選手たち。

ところが、チェルシーのカイ・ハヴァーツにその言葉は当てはまらない。

ドイツの新皇帝

既にレバークーゼンで欧州CLを含む100試合超に出場。

まだ21歳ながらその経験値は非常に高い。

2年連続でブンデスリーガ2桁得点をマークするなど得点力も持ち合わせ、ドイツ代表でも常連メンバー。

実績ではこの世代でもトップクラスだろう。

100億の値札が付いたが、各クラブが財政難に陥る間隙を縫ったのがチェルシー。

今夏最大の目玉移籍は、エデン・アザールに次ぐ「クラブの顔」になるのではという希望も孕んでの獲得だった。

前監督、フランク・ランパードは開幕戦で即座にスタメン起用。連携面こそまだ拙かったが、随所に技術の高さを見せた。

今夏同じくブンデスリーガで結果を残し、ドイツ代表のチームメイトであるティモ・ヴェルナーもスカッドに加わった。

さらには高額な移籍金も相まって、重圧にも似た期待を背負った。

停滞の日々

ところが現実は期待通りに上手くはいかなかった。

慣れない新リーグ、新チームというだけでどんな選手でもバランスを崩す。

特にフィジカルを重視し、アスリート力が求められるプレミアリーグでは多くの選手が適応に苦労する。

ベルナルド・シウバ(マンチェスターシティ)や、ファビーニョ(リバプール)のような、現在強豪の中盤を担うような選手たちでさえ最初のシーズン、それも序盤戦はほとんどインパクトがなかったのだ。

さらに第2節、リバプール戦ではフィルジル・ファン・ダイク相手にも偽9番に近い形で奮闘を見せたが、アンドレアス・クリステンセンの退場の余波で僅か45分の出場に留まる。

その後は本人もチェルシーも消化不良の戦いが続いた。

ハキム・ツィエクの復帰など、ようやくチームが波に乗り出したところで、今度は新型コロナがハヴァーツを襲う。

強制的にチームを離れることになった。

余談ではあるが、新型コロナは屈強なアスリートであれば、感染こそすれほぼほぼ重篤化の危険はないだろう。

一方で長期的に呼吸器に影響を与え、後遺症も残ると言われている。

もちろん練習から離れていた、というのもあるだろうが、どうにもコロナから復帰した選手たちはトップフォームまで戻るのに時間がかかっているように見受けられる。

ハヴァーツも復帰こそ早かったものの、その後のプレーは以前と同じようには見えなかった。

そんな中チームも調子を大きく落とし、遂にはランパードが責任を問われる形となった。

これは推測も混ざっているが、ハヴァーツのプレースタイルも批判を浴びやすいと思われる(その批判が正しいわけではない)。

軽快なタッチと取るか軽いプレーと取るか。

走らせると取るか走らないと取るか。

アクセントと取るか足枷と取るか。

古典的トップ下が淘汰される時代になったこと、さらにはお隣で共通項の多いメスト・エジル問題が盛んに取り沙汰されていた時期だったことも、悪い方に働いたのではないか。

風向きが変わったかと思われたドイツ人新指揮官、トーマス・トゥヘルの就任。

チームは再び白星を取り戻したが、カイ・ハヴァーツはケガで戦列を離れる、苦しい時間を過ごした。

完全復活の90分

リバプール戦の終盤に復帰し、実に6戦ぶりの出場となったハヴァーツ。

そのままトゥヘルはエヴァートン戦の先発メンバーに選んだ。

過密日程の中、ここまで獅子奮迅の活躍を見せてきたマウントをベンチスタート。

その決断を理解こそすれ、どちらかと言えば不安をより強く感じたチェルシーサポーターの方が多かったのではないか。

ところがこの90分で全員が思い出す。

カイ・ハヴァーツは既に「覚醒」を終えていた存在であったことを。

前線で起用されると、神出鬼没の動きから好位置でパスを引き出す。

潤滑油となりつつスピードのあるカラム・ハドソン・オドイやヴェルナーを従えると、自身も何度もエリア内に侵入。

極めつけは31分。シュート性の早いクロスを右足で触り角度を変えると、最後は相手DFにあたってゴールイン。

かなり難しいボールだったが、咄嗟に逆足でゴール方向に飛ばせる反応は明らかにコンディションと試合勘が戻ったことを示していた。

後半でも輝きは増すばかり。

53分には柔らかい胸トラップから完璧なフィニッシュを見せたが、ギリギリの判定でノーゴール。

それでもわずか10分後には、マテオ・コバチッチのスルーパスに反応。

意外に思われがちなスピードを爆発させ、勝利を決定づけるPKを奪取。

結局全ゴールに絡む活躍でCL権を争う直接のライバルを撃破した。

大型補強で各ポジションでスタメン争いのあるのが今のチェルシーだ。

その中でメイソン・マウントが唯一替えの効かない存在かと思われていたが、ここに来てカイ・ハヴァーツが本領を発揮。

ライバル関係にもなるかもしれないが、同じくらい共存の展望も広がる。

ドイツの新皇帝とイングランドの希望。

この若き才能たちが、新たなチェルシーの顔になるかもしれない。

真価が問われる決戦

彼に覚醒という言葉は似合わない。

150%や200%へと絶対値を延ばしたオドイらユース組に比べれば、彼はただ「既に持っているもの」を何%出せるようになったかという問題だからだ。

そして十全に出せさえすればプレミアリーグで勢いに乗るチームさえ手が付けれられない、既にそんなレベルだということだ。

そして末恐ろしいのはまだ復帰間もないというところ。

もちろん連携面でもまだまだ改善の余地はある。

これからあと何%先があるのか、もっと言えば、更なる「覚醒」も待っているのか。

今週の木曜にはCL決勝T2ndレグ、アトレティコ・マドリード戦が控える。

1stレグで出色のパフォーマンスを見せたマウントの出場停止が決まっている以上、攻撃陣に創造性を吹き込む存在としては最右翼。

スタメンに抜擢される可能性は極めて高い。

キリアン・ムバッペ(PSG)やエーリング・ホーランド(ドルトムント)ら、既に今季CLでは怪物級の若手がチームをベスト8に導いている。

そこにカイ・ハヴァーツの名が加わるか。

遂に本領を発揮し出した「ドイツの新皇帝」。

カイ・ハヴァーツの名を轟かせる全ての準備は整った。

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